【スポーツ医学コラム】足関節捻挫の治癒を阻む「立方骨」のトラブルとは?〜足部バイオメカニクスの重要性〜

【この記事の要旨】
スポーツ現場で頻発する足関節の内反捻挫。靭帯の修復が終わっても「踏み込み時の違和感」や「足の外側の痛み」が長引く場合、足のアーチを構成する「立方骨」のサブラクセーション(関節のズレ)が疑われます。本コラムでは、名古屋駅前で長年スポーツ障害の臨床と研究に携わる榊原直樹(スポーツ医学博士/D.C.)が、アスリートの競技復帰を阻む「立方骨症候群」のメカニズムをバイオメカニクス(生体力学)の観点から紐解きます。

スポーツの練習中や試合中、最も身近でありながら、後遺症に悩まされることが多いケガが「足関節の内反捻挫(足首を内側に捻るケガ)」です。

当研究所(スポーツ医学&カイロプラクティック研究所)にも、「整形外科で靭帯は治っていると言われたが、走るとまだ外側が痛い」「以前のような力強いステップが踏めない」と訴えて来院されるアスリートが後を絶ちません。

このようなケースにおいて、スポーツカイロプラクティックの視点で必ず評価しなければならないのが、足の外側に位置する「立方骨(りっぽうこつ)」という小さな骨の生体力学的な異常です。

走る・跳ぶ動作を支える「踵立方関節」の精巧なメカニズム

足部には「横足根関節(ショパール関節)」と呼ばれる重要な関節線が存在し、外側の「踵立方関節」と内側の「距舟関節」で構成されています

特に立方骨と踵(かかと)の骨で構成される踵立方関節は、凹凸状の関節面が噛み合わさる構造をしており、スポーツ動作において極めて重要な「衝撃吸収」と「推進力」の切り替えスイッチを担っています

  • 接地時(クッション機能): かかとが地面に触れた瞬間、関節は完全に噛み合っておらず「緩みの位置」となります 。これにより、着地時の大きな衝撃を吸収します。

  • 蹴り出し時(テコ機能): つま先で地面を力強く蹴り出す(トーオフ)瞬間、立方骨が回内運動を起こすことで関節面がカチッと噛み合い、「締りの位置」となります 。関節がロックされて足部が強固な板(テコ)となることで、爆発的な推進力が生まれます。

扁平足などでこのバイオメカニクスが破綻すると、蹴り出し時に足部が安定せず、その代償として脛骨(すねの骨)が内旋し、膝関節や仙腸関節、さらには腰椎にまで捻じれのストレス(負の運動連鎖)が伝達されてしまいます

捻挫に合併する「立方骨症候群」の罠

足首を内側に捻ると、外くるぶし周辺の靭帯(前距腓靭帯など)が損傷します。しかし、注目すべきは足関節内反捻挫の最大40%のケースにおいて「立方骨症候群」が併発しているという事実です

立方骨症候群とは、踵立方関節におけるサブラクセーション(機能的な関節のズレ)を指します 。なぜ、捻挫と同時に立方骨がズレてしまうのでしょうか。

その鍵を握るのが、ふくらはぎの外側から足裏を通る「長腓骨筋(ちょうひこつきん)」です。 長腓骨筋の腱は、立方骨の外側にある溝を「滑車」のように利用して走行しています 。捻挫の瞬間、足首が急激に内側に反らされると、この長腓骨筋腱が強烈に引き伸ばされます。その結果、滑車の支点となっている立方骨に対して内下方(回内方向)への強い牽引力が働き、立方骨が正しい位置から引きずり降ろされるようにズレてしまうのです

早期の競技復帰へ向けたスポーツ医学的アプローチ

靭帯の組織修復が完了しても、この「立方骨のズレ」が残ったままであれば、足部のロッキングメカニズムは正常に機能しません。これが、いつまでも痛みが取れない、あるいはパフォーマンスが元に戻らない根本原因です

当研究所では、足関節の可動域検査だけでなく、立方骨に対する他動的な「内転検査」や「回外検査」などの整形外科的テスト・カイロプラクティック的評価を用いて、関節のフィクセーション(引っ掛かり)を正確に特定します

立方骨のサブラクセーションに対し、適切なマニピュレーション(手技療法)を施して関節の正常な滑りを取り戻すことで、足の外側の痛みが消失し、再び力強く地面を蹴れるようになるアスリートを数多く見てきました。

「たかが捻挫」と放置せず、足部全体のバイオメカニクスを正常化することが、安全で早期のスポーツ復帰、そしてケガの再発予防において最も重要なアプローチとなります。

この記事のベースとなったコラムは、徒手療法大学の公式サイトにて公開しています。未来のカイロプラクターに向けたより専門的な情報にご興味がある方は、ぜひあわせてご一読ください。

足首の捻挫が長引く理由?見落とされがちな「立方骨」の生体力学

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