異国の地での臨床実践
現在、ミャンマーのタウンドゥインジー村に滞在しています。 今回は、私が長年関わりを持っているチャンミ瞑想センターのご縁で、現地の村民の方々へカイロプラクティックを提供する機会を得ました。
日本とは環境も文化も異なる場所で、私たちの技術がどのように受け入れられ、どのような結果をもたらすのか。今回はその臨床報告を綴りたいと思います。
言語を超えた「身体との対話」
今朝は6時にホテルを発ち、センター内の診療所にて8時から施術を開始しました。 当初予定されていた患者数は20名程度でしたが、実際にはそれを大きく上回る方々が来院されました。同行の大門先生と共に、午後1時までの約5時間、休憩なしで施術にあたりました。
これほどの短時間に多数の患者を診る「ハイボリュームな臨床」は、ある種のスポーツに近い感覚があります。思考がクリアになり、触診の感覚が鋭敏になる「フロー状態」に入ったと言えるでしょう。 言葉による問診が難しい環境下では、手指から伝わる情報の重要性が極めて高くなります。筋緊張の左右差、関節の可動域制限、組織の質感。これらを頼りにアジャストメントを行う過程で、カイロプラクティックという徒手療法が持つ「非言語的なコミュニケーション能力」の高さを再確認しました。
生活背景を知ることが治療の鍵
施術後、現地の方の案内で村を視察しました。 彼らの住環境、労働環境、そして食生活。これらを肌で感じることは、単なる観光ではなく、臨床における重要な情報収集(アナムネシス)の一部です。
どのような姿勢で作業をしているのか、どのような寝具で寝ているのか。彼らの生活背景(ADL)を理解することで、午前中に診た症状の原因がより立体的に見えてきました。現代的な設備が整った日本の診療室では見えにくい、医療の原風景がそこにはありました。
即時効果と患者のフィードバック
夕食時、嬉しいハプニングがありました。 午前中に施術を受けた数名の患者さんが、わざわざ私の元へ駆け寄り、「腰の痛みが消えた」「身体が軽くなった」と報告に来てくれたのです。
カイロプラクティックの最大の強みは、この「即時性」にあります。 薬物療法とは異なり、構造的な問題をその場で矯正することで、患者自身が明確な変化を体感できる。この喜びの共有は、国境や文化を超えた普遍的なものです。彼らの笑顔とフィードバックは、臨床家として何よりのエビデンスとなりました。
継続的なフォローアップへの責任
明日は、センターにて150名の子供たちが参加する出家式(シンビュ)が執り行われます。村全体が祝祭に包まれる特別な一日となりますが、私はその合間を縫って「予後確認」を行う予定です。
本日の診療で、特に症状が重篤であったケースや、経過観察が必要と判断したケースについては、一回の施術で完了とするのではなく、翌日の再評価(Re-evaluation)が不可欠です。 ボランティアという限られた枠組みの中でも、プロフェッショナルとしての臨床基準(Standard of Care)を崩さず、可能な限りのフォローアップを行いたいと考えています。
華やかな伝統行事の傍らで、静かに、しかし確実に、人々の健康に向き合う一日となりそうです。