【臨床報告】言語的制約下における徒手療法の「直観力」と客観視の考察 ― ミャンマー・タウンドゥインジーでの活動より

【ミャンマー視察・臨床報告】
2026年2月、ミャンマーのタウンドゥインジー村にて実施したボランティア診療を通じ、言語的コミュニケーションが制限された環境下における「徒手療法の安全性と直観力」について再考しました。ヴィパッサナー瞑想による「術者のメンタルセット(客観視)」が、触診感度とアジャストメントの精度にどのような影響を与えるのか。同行した若手臨床家の反応と共に報告します。

こんにちは、スポーツ医学&カイロプラクティック研究所・所長の榊原です。

本日、ミャンマー(ヤンゴン・タウンドゥインジー)での活動を終え、ハノイ経由で名古屋へ戻りました。

今回の渡航の主目的は、現地パートナーであるサイン氏の協力のもと、1トンのお米と古着を孤児院や村へ寄付すること、そして現地のチャンミ瞑想センター附属クリニックにおけるカイロプラクティック治療の提供でした。

本稿では、通常の臨床とは異なる「極限の環境」が、我々徒手療法家の技術にどのような示唆を与えたかについてまとめます。

1. 言語情報の遮断と「非言語的評価」の重要性

日本の臨床現場において、我々は問診(言語情報)に多くの比重を置いています。しかし、今回のミャンマーでの診療は、通訳を介するとはいえ、ダイレクトな言語的コミュニケーションが著しく制限される環境でした。

こうした状況下では、術者の感覚センサーは必然的に「手」と「目」に集約されます。

  • 皮膚の温度と質感
  • 筋緊張の微細な左右差
  • 呼吸による胸郭の動き
  • 患者が発する全体的なエネルギー(緊張感)

これら「非言語的情報」を統合し、瞬時にアジャストメントのベクトルを決定するプロセスは、まさに「臨床的直観力(Clinical Intuition)」の実践そのものでした。

2. 瞑想的客観視がもたらす「クリニカル・ジャッジメント」

今回、瞑想界の指導者であるチャンミ・サヤド(長老)と謁見する機会を得ました。長老の纏う空気感は、慈悲深さと同時に、極めて「明晰な客観性」を感じさせるものでした。

私が2000年から継続しているヴィパッサナー瞑想は、臨床において「自身のバイアス(思い込み)を排除する」ために不可欠なツールです。今回のような慣れない環境下でも、心を静寂に保ち、患者の身体を「あるがまま」に観察する(客観視する)ことで、迷いのない安全な治療が可能となります。

「直観」とは当てずっぽうな勘ではなく、「徹底的な客観情報の蓄積が、瞬時の判断として出力されたもの」であると再確認しました。

3. 若手臨床家の適応と成長

同行した大門先生(2024年に続き2回目の参加)の言葉が、今回の臨床実験の成果を象徴しています。

「言葉の壁があったからこそ、かえって直観力が研ぎ澄まされました。前回は手探りでしたが、今回はカイロプラクターとして確かな手応えを感じています」

問診に依存できない環境が、逆説的に彼の触診能力と観察眼を強制的にアップデートさせたと言えます。これは、今後のカイロプラクター育成プログラムにおいても重要な視点となるでしょう。

4. 総括:名古屋の臨床への還元

サイン氏の多大なる尽力により、現地の患者さんに笑顔を届けることができたことは、医療従事者として大きな喜びです。しかしそれ以上に、私自身が「徒手療法の原点」に立ち返る貴重な機会となりました。

今回の知見を、スポーツ医学およびカイロプラクティックの臨床現場、そして教育現場へと還元し、より精度の高い徒手療法の確立に尽力してまいります。

徒手療法大学では現在学生を募集中です。カイロプラクターになりたいという方はぜひお問い合わせください。
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