久しぶりにトレーニングの話題。
先日、ボディビル界の間では有名なビルダーJ.K.氏が来られた。ミスター日本でも常に上位に名を連ねるベテランビルダーだ。
今回は久しぶりの来院だった。K氏は解剖学にも詳しく、自身の自覚症状についてかなり細かく説明してくれる。そして、それは当たっていることが多い。今回は梨状筋の問題であった。それはさておき・・・
K氏と話している時、チンニングの話題となった。ビルダーの患者さんとは必然的にトレーニングやコンテストの話になることが多い(笑)。
K氏の広背筋はトップビルダーの中でも特に素晴らしく評価も高い。その彼が「小さい頃から懸垂ばかりしていた」と言う。
『やはり、そのバルキーな背中は子供の頃からの鍛錬の賜物だったのか!?』などと心の中でつぶやいていると、K氏はそれに続けて・・・
「でも、その頃の懸垂では大円筋にばかり効いていました」と言うのだ。
トレーニングに馴染みのない方は、懸垂は腕の力で行っている感覚が強いだろう。しかし、K氏は既にこの頃から大円筋を意識できていたのだから、やはり何かが違う。
ここで、懸垂とチンニングの違いを説明しておこう。
基本的にチンニングの方が手幅が広くなる。これは広背筋の広がりを意識してトレーニングするためである。手幅を広く維持してチンニングすることで、広背筋に広がりが出て逆三角形の上半身を作り上げることができると言われている。
当然ながら、手幅が広がる分、懸垂よりもチンニングの方がきつい。
K氏の言葉に戻ろう。
K氏の言う大円筋にばかり効いていたという言葉の裏には、「チンニングのターゲットは広背筋だよ」という言葉が暗にほのめかされている。
そんなことは、トレーニング開始初期のころから知っている。トレーニング関連の書籍を見れば書かれてある超基本的な知識だ。
しかし、今までチンニングで広背筋に効かせるという感覚がどうしても得られずにいた。そこでK氏のこの言葉だ。
(ぼくの場合、今までチンニングではなく、ロープーリーやダンベルローなどで広背筋に効かせることが多かった)
そこで、当院にあるスクワットラックを使い、暇を見つけてはチンニングで検証を行ってみた。
すると何とチンニングで広背筋に効かせるコツがわかってきたのだ!
トレーニングをかじったことがある人ならば、チンニングによって大円筋に負荷がかかるのは簡単にわかるだろう。
しかし、それを無意識にやっているだけでは、大円筋にばかり刺激が入ってしまう。
つまり、大円筋には無意識でも負荷が乗るので、ここでは敢えて意識を広背筋に向けるように頑張ってみる。
何点かポイントがある。
- 意識を広背筋にとどめるように努める
- チンニングの伸張性収縮時における後半1/2で広背筋に負荷が乗せられるようにマッスルコントロールする
- この時、広背筋に負荷が乗っている感触を確かめながら、ゆっくりと身体を下ろす
- 伸張性収縮時には真下に身体を下ろすのではなく、やや斜め後方に向かって下ろすようにする
- 運動時、脊柱はやや伸展位で保持する
- 手幅はやや狭めにする
- 肘は完全に伸ばし切らないようにし、広背筋から負荷が逃げないようにする
以上を実践すれば、チンニングで広背筋に効かせられる感覚が得られるだろう。
それにしても、30年間もウエイトトレーニングをしてきて、未だに新しい発見があるというのは、トレーニングの奥深さを感じさせられる。
このような気づきのきっかけを頂けたK氏には大いに感謝している。
単に気づくのが遅いだけという話もあるが(笑)・・・・
2016年9月25日(日)関節運動学的セミナー@大阪 (脊柱)
【9月のお休み】 9月7日(水)、8日(木)、25日(日)