腰痛

腰痛は当院に来られる方の中でもっとも多い症状です。しかし、原因は十人十色です。つまり、十人の腰痛患者さんがいたら、十通りの原因が存在します。

腰痛を引き起こす疾患には以下のようなものがあります。

脊柱管狭窄症、梨状筋症候群、椎間板ヘルニア、椎間孔狭窄症は、いずれも坐骨神経が刺激されることで現れる症状です。従って、自覚症状は太ももの裏側からふくらはぎ、足裏にかけての痛み、しびれ、感覚マヒになります。

また腰痛の原因となる構造を分類すると以下のようになります。

1.筋肉(腱)
2.神経
3.関節
4.内蔵

1.筋肉(腱)

腰部には非常にたくさんの筋肉があります。例えば、腰方形筋、脊柱脊柱起立筋、回旋筋、多裂筋などなど。腰痛を訴える患者さんの多くは、これらの筋肉に何らかの損傷を抱えていることがあります。

ぎっくり腰などでは、短時間に急激な負荷が腰部に加わることで、腰部周辺にある筋肉を傷めてしまいます。損傷直後は炎症反応のために数日間鋭い痛みが続きますが、数週間・数か月経過しても痛みがなかなか軽減してこない場合もあります。

そのようなケースで考えられるのは、損傷した筋肉の周辺組織との癒着です。筋肉を傷めると内出血が起こりますが、しばらくすると線維化が現れ始めます。線維化とは”かさぶた”のようなものだと思っていただければ結構です。これは、治癒の正常なプロセスです。通常、かさぶたは自然に剥がれ落ちますが、自己治癒能力の低下している人の場合、それが周辺組織と癒着となって維持されてしまいます。すると、組織の間で摩擦が生じますので、動くたびに傷めてしまい(微細外傷/マイクロトラウマ)、損傷部位がなかなか治癒に至らないというわけです。

このような症状に対しては、癒着部位をはがす治療を施すことで劇的に症状改善が起こります。癒着がはがれると、血液循環が戻り治癒が促進されるからです。手技によって十分対応可能な症状です。

2.神経

腰痛にもっとも影響するのが坐骨神経です。坐骨神経痛という言葉を聞いたことがある人も多いことと思います。坐骨神経痛では、でん部や太ももの裏側からふくらはぎ、そして足の裏にかけての痛みやしびれが主徴となります。このように腰を中心にして、脚に痛みが広がるというパターンが多いですが、必ずしもそれだけとは限りません。

腰部に痛みが局在していることもあります。そうなると、上で説明した筋肉の痛みとの区別が難しくなります。しかし、神経には特有の痛みがあります。触診により患部を刺激したときに患者さんが感じる痛みの質から、おおよそ見当をつけることができます。

それでは、いったい神経に何が起こっているのでしょうか?基本的には神経が何らかの刺激を受けているのが根本原因となります。それらには以下のような原因があります。

1.筋肉、骨、靭帯などからの圧迫刺激
2.椎間板ヘルニアによる圧迫刺激
3.神経の伸縮性の減少による物理的刺激
4.神経運動の可動性減少による刺激

神経は筋肉の間を走行しています。従って、筋肉に過剰な緊張がある場合、または筋肉と神経との間に癒着がある場合は神経が刺激されるため痛みなどの症状が引き起こされます。例えば、梨状筋症候群という症状がありますが、これはでん部の筋肉(梨状筋)が坐骨神経を圧迫することが原因です。このようなケースでは、周辺組織との癒着をはがすこと、そして筋緊張の改善が根本的治療になります。

次に椎間板ヘルニアですが、これは背骨の間にある椎間板が何らかの原因により後方へ突出し、それが神経(脊髄神経)を刺激することで痛みが惹起されます。このように、神経が物理的(機械的)刺激を受けることで、症状が引き起こされるわけです。

また、神経の伸縮性が失われることでも神経性の症状は現れます。神経も筋肉や腱と同じように軟部組織です。従って、硬くなったり柔らかくなったりします。場合によっては、この柔軟性が失われてしまう場合があります。すると、少し伸ばしただけで神経には過剰な負荷が加わるため、痛みが誘発されてしまいます。治療によって神経の伸縮性を改善させていくことで、症状は軽減していきます。

最後に神経運動についてです。先ほど書いたように脊髄神経は椎間孔から出た後、軟部組織の間を走行して抹消まで伸びています。脚を動かしたとき、神経は周辺組織(主に筋肉)との間で滑り運動が起こっています。腰痛症状を訴える人の中には、この神経の滑り運動が適切に起こっていないことがあります。神経運動の可動性が減少している状態です。基本的には滑り運動を促すような治療を行っていきます。

 

3.関節

背骨がずれること(サブラクセーション)によっても、神経は圧迫を受ける可能性があります。背骨の間からは脊髄神経が出ていますが、この脊髄神経が通る穴のことを椎間孔と言います。

背骨がずれることにより、この椎間孔に狭窄が起こり、それが脊髄神経の圧迫を引き起こします。腰部の脊髄神経が圧迫されることで、でん部から大腿部後面、さらにふくらはぎ、足裏にかけて痛み(関連痛)が引き起こされます。この場合、背骨のずれを治し(アジャスメント)椎間孔の狭窄を除去することで、神経圧迫を取り除きます。

また、関節そのものが腰痛の原因になることもあります。関節面(関節軟骨)が圧迫刺激を何度も受けることにより、軟骨の摩耗が生じ(変形性関節症)、衝撃が直接的に硬骨(軟骨以外の部分を硬骨と言います。骨の本体の部分のこと)に伝わることで痛みが発生します。この時の痛みは鋭い局所的な痛みになります。

さらに、この関節からは関連痛が生じることもあります。腰椎の関節(椎間関節)からの関連痛は、主に腰部からでん部、さらに大腿部後面へと広がっています。

骨盤にある仙腸関節も腰痛の原因になります。仙腸関節はぎっくり腰で傷めることが多い関節です。この関節は平面と平面が合わさるような形状をしており、物をもって持ち上げようとするときに剪断力(関節面が擦れる時に生じる負荷)が働きます。痛みに対して非常に敏感な部分なので、仙腸関節を傷めると鋭い痛みが引き起こされます。また、この関節も下肢への関連痛の原因になります。

 

4.内蔵

内蔵疾患も腰痛の原因になります。主に小腸や大腸などの腸管、また腹大動脈などの血管も腰痛を引き起こします。これら臓器によって引き起こされる腰部の痛みを関連痛と呼びます。

内蔵起因の腰痛の場合、痛みは深部痛(深いところから来る痛み)であることが多く、また姿勢を変えても(前屈や後屈)痛みに大きな変化が起こらないという特徴があります。また、「腰が痛いのだけれども、腰を触っても痛くない」というのも特徴です。

筋骨格神経系に起因する腰痛に比べて、少なくなりますが、なかなか治らない慢性腰痛のケースでは比較的好発します。また、このようなケースでは身体の疲れや耳鳴り、めまいなどいわゆる不定愁訴と言われる症状が併発している傾向があります。

病理的なものである場合、専門医をご紹介しますが、医学的検査を受けても原因がわからない場合は、手技療法が治療の選択肢となり得ます。

内蔵組織の癒着や血行不良などが原因になっていることが多いので、これらを徒手的に治療していきます。またこの場合は栄養療法も合わせて行うとより効果があります。